Delicacy

where the flowers bloom at midnight

ニンフとサテュロス

 

 

以下、サマセット・モーム「月と六ペンス」より。

 

ギリシャの森を飛ぶように逃げるニンフのあとを、サテュロスが追いかける。ニンフは必死で駆けるが、サテュロスは一歩また一歩と距離を縮める。やがて熱い吐息がニンフの頬にかかる。ニンフは無言でなおも逃げ、サテュロスもまた無言で追う。ついに捕らえられたとき、ニンフの胸を震わせたのは恐怖だろうか、それとも恍惚だろうか。

 

想像力を掻き立てられる描写である。

自分をニンフに投影するかサテュロスに投影するか、もしくはどちらでもないか。